2019年05月24日

「おぼろ月夜」考

 次回の演奏会では日本の唱歌も取り上げる。日本の唱歌と言えば、作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一のコンビが有名だ。この二人は多くの名曲を残しており、今回もそのうち「おぼろ月夜」「故郷」「紅葉」を歌う。私は、特に「おぼろ月夜」が好きだ。
 まず、詞が良い。一幅の画を見ているようだ。菜の花畑、入日、山の端、霞、夕月と日本の美しい景色を次々に提示して、情景だけを描写しているのに、聴いた人には懐かしさやほのぼのとした暖かさが湧き上がってくる。「夕月かかりて匂い淡し」など、古雅な趣も良い。冒頭を敢えて和歌にしてしまうと、「菜畑に入日薄れて見渡せば山の端深く霞立ちたり」となり、古今和歌集の読み人知らずと言われても納得してしまうような美しさがある。
一方、曲は揺れるような四分の三拍子で、歌詞の魅力を一層引き立てる美しいメロディーだ。アウフタクト(強拍である一拍目から始まらずに、小節の途中の弱拍から始まる)の曲だが、譜面を見ていない人は、アウフタクトではないように感じる人もいるのではないか。否、むしろ歌詞の音節だけを考えると、その方がピタッとはまる。
しかし、一拍目から始めるつもりで口ずさんでみると、きっちりし過ぎて前のめりになってしまい、どうもしっくりこない。春の霞んだ景色が揺らいで見える感じがしないのだ。このあたりは作曲者も意識していたのではないか。「さながら霞めるおぼろ月夜」はアウフタクトの方が良い。 (ヨッシー)
posted by blogstaff at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常風景
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